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内容説明

2013年12月発行

簡易裁判所における民事調停事件の運営方法に関する研究
司法研修所編(司法研究報告書第66輯第1号)
書籍コード 25-23 A4判 178頁  
 本研究は、簡易裁判所における民事調停事件の運営方法を実証的に研究するものである。
 平成24年に創設90周年を迎えた民事調停は、広く国民から利用され、これまで長く我が国の国民性に合致するものとして一定の評価を得てきた。しかし、民事調停を巡る諸情勢は大きく変化してきており、このような中で民事調停が国民にとって魅力的な紛争解決手段であり続けるためには、その機能を強化していく必要がある。
 司法研究は、裁判実務上の重要な問題についての裁判官による実務研究として、昭和22年以来ほぼ毎年実施されているものであるが、司法研究のテーマとして民事調停が取り上げられたのは今回が初めてである。そこで、本研究では、調停制度の歴史的経緯を探求し、諸外国の制度との比較を行った上で、改めて民事調停の特徴を明らかにしつつ、全国の簡易裁判所で利用することができる実務に即した汎用性のある調停運営モデルを示すことを目的とした。
 本研究に当たっては、調停官及び調停委員に対してインタビューを実施し、近時の民事調停を巡る変化や現在の問題点、その克服策について御意見をいただいた。また、東京簡易裁判所及び大阪簡易裁判所の調停担当裁判官から聴き取りを行い、審理の現状等について実務の知恵を集積した。さらに、最高裁判所を通じて在外研究員に対し、諸外国における裁判所付設型ADRの有無とその内容についての調査を依頼し、その回答結果により審理の実情を知ることができた。
 なお、本研究は、民事調停の基本的な考え方や運営の在り方について提示したものであるが、その本質部分は、同じ調停である家事調停においても共通する部分が多くあるものと思われる。家事事件についても、平成25年1月1日に家事事件手続法が施行されたことを踏まえ、調停運営に関する検討が進められている。今後、民事調停及び家事調停が共に調停運営の改善を進めることによって、来るべき調停100周年に向けて、調停制度が一層発展することを望むものである。
(「はしがき」より抜粋)
目 次
第1編 本 編
序 本研究の概要
1 本研究の目的
2 本研究の対象・内容
第1 民事調停の歴史・他制度との比較
1 民事調停の歴史的経緯
(1) 前 史
(2) 借地借家調停法の制定
(3) 民事調停法の制定
(4) 昭和49年の民事調停法改正
(5) その後の民事調停法改正等の動き
(6) 小 括
2 諸外国の裁判所付設型ADRとの比較
(1) アメリカ合衆国
(2) イギリス
(3) ドイツ
(4) フランス
(5) オーストラリア
(6) 小 括
3 我が国の他の紛争解決手段との比較
(1) 民事訴訟との比較
(2) 労働審判との比較
(3) 他の裁判外紛争解決手続(ADR)との比較
4 まとめ
第2 民事調停の現状と課題
1 はじめに
2 民事調停に関する客観的統計データ
(1) 簡裁民事調停の事件類型
(2) 簡裁民事調停事件の解決率
(3) 弁護士関与事件の推移
3 民事調停の現状把握と検証
(1) 民事調停の機能強化に向けた取組の試行
(2) 民事調停シートについて
(3) シートから得られた試行結果
4 インタビュー結果からみられる現状と課題
(1) インタビュー対象者等
(2) 近時の民事調停における変化や傾向
(3) 調停運営の実情と問題点
(4) 利用者の期待に応えるための改善策
5 統計データ、試行結果、インタビュー結果から把握できる課題
(1) 在るべき調停運営の方向性
(2) 調停の各手続段階における具体的課題
(3) 期日管理の重要性
第3 調停運営の具体的な在り方の検討
1 はじめに
(1) 本研究で目指すべき具体的提言
(2) 具体的な実践における留意点
(3) 本項で検討の対象とする事案類型
(4) 小 括
2 受付段階から第1回期日前評議まで
(1) 第1回期日までの事前準備の重要性
(2) 申立書の受理
(3) 担当書記官への引継ぎと調停主任による記録検討等
(4) 照会書について
3 第1回期日前等の評議
(1) 第1回期日前等の評議の重要性
(2) 第1回期日前評議を要する事件の選別
(3) 事前評議で協議・確認すべき内容
(4) 事前評議の工夫例
4 事実の整理・認定
(1) 調停における事実認定の意味
(2) 事実認定の方法
(3) 的確な事実認定をするための資料の収集方策
(4) 事実認定のための評議
5 解決案の策定・提示
(1) 解決案の策定・提示と当事者の自主的解決
(2) 解決案策定の方法
(3) 解決案の提示と当事者の説得調整
6 調停に代わる決定
(1) 調停に代わる決定の活用の必要性
(2) 調停に代わる決定の活用のあい路
(3) 調停に代わる決定の活用場面
(4) 調停に代わる決定を行うタイミングや当事者に対する説明
(5) 調停に代わる決定の内容
7 期日管理
(1) 期日管理の重要性
(2) 期日管理の方策
第4 運用モデル
1 目 次
2 ケース1 貸金返還請求調停事件
3 ケース2 建物補修請求調停事件
4 ケース3 損害賠償請求調停事件
5 ケース4 請負代金請求調停事件
6 ケース5 所有権確認請求調停事件
第2編 資料編
1 民事調停シート
2 平成24年度簡易裁判所民事事件担当裁判官等協議結果
3 証拠書類一覧表
(1) 東京簡易裁判所書式
(2) 大阪簡易裁判所書式
4 事件メモ(大阪簡易裁判所書式)
5 照会書
(1) 東京簡易裁判所書式
(2) 大阪簡易裁判所書式(照会書(相手方用))