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内容説明

2014年1月発行

民事訴訟における事実認定
―契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)―
司法研修所編(司法研究報告書第65輯第1号) ISBN 978-4-908108-13-6
書籍コード 26-03 A5判 350頁 定価 2,985円(本体 2,714)
 通用力のある質の高い民事裁判を実現するには,適正な事実認定が必要不可欠である。したがって,民事訴訟の事実認定についての研究は,重要でかつニーズの高いものであるが,それにもかかわらず,その困難性ゆえに,本格的な研究は余り多くない。この分野における司法研究の先例としては,平成17年度司法研究「民事訴訟における事実認定」がある。これは,民事事実認定の全般を幅広く対象とするものであり,事実認定に関する判例法理を整理・検討するとともに,裁判実務において培われ,受け継がれてきた様々な事実認定の技法や考え方を言語化し,法曹全体の共有財産とすることを目指すものであった。この研究では,事実認定について裁判官集団が蓄積してきた知見が整理されており,いわば裁判官集団の内的視点からの研究成果として,極めて有用な資料となっている。しかし,現代社会は複雑に分化し,しかもそれぞれの分野で専門性が進展しており,これに伴い,現代の民事紛争は,専門分野の契約類型ごとに相当異なる様相を呈している。こうしたことから,民事訴訟において民事紛争の実態を正確に理解することはますます困難となってきており,事実認定についての一般的な知見や方法論のみでは十分な対応ができない事態が生じている。
 本研究は,民事訴訟における事実認定―契約分野別研究「製作及び開発に関する契約」を研究するもので,現代型契約の典型例といえる製作及び開発に関する契約として,建築工事契約,ソフトウェア開発契約及びプラント建設契約の三つを取り上げた。各種契約において,製作ないし開発の対象となる建築物,ソフトウェア及びプラント施設について,いかなる仕様で合意したのかについての事実認定は,いずれもその契約締結時には,製作ないし開発の対象となる有形無形の物が存在しないこともあって,裁判実務上も困難な類型に属する。こうした現代型契約の合意の実態に即した事実認定を行うためには,従来からの内的視点からの事実認定の方法論に加え,外的視点,すなわち,契約類型ごとに,当該取引の実態や当該業界の背景に関する知見を導入し,これを活用して事実認定を行うことが必要不可欠となっている。そこで,本研究では,文献・資料からでは把握することが難しい当該業界に関する知見について,実際にそれぞれの分野の関係者の方々からヒアリングを実施して,契約や取引慣行等の実情を理解することに努めた。
(「はしがき」より抜粋)
目 次
第1章 本研究の概要
第1 本研究の目的
第2 本研究の対象・内容
第3 本研究の方法と研究の経過
第4 開発型契約の特徴
1 仕様に関する合意の存在
2 プラント建設契約の特徴
3 仕様に関する合意の分析の視点
4 仕様に関する合意の特徴
第5 各論の構成
第2章 建築工事契約
第1 本研究が対象とする建築工事契約
1 建築の意義
2 生産過程と契約形態
3 仕様確定のための合意形成
4 仕様に関する合意の特徴
5 本研究の検討対象―建築の仕様に関する合意
第2 建築請負の仕様に関する合意形成過程の実態について
1 概 説
2 仕様に関する合意を形成する際の諸要素について
3 合意形成過程の時間的考察について
4 合意形成の背景にある当事者の関係等
5 多数者の関与する意思形成・合意形成
6 リフォームにおける合意形成の実態について
第3 合意形成過程において認識の齟齬が生ずる原因
1 序―インターフェイスの存在と認識の齟齬
2 情報伝達の困難性
3 専門的技術に関する知識の非対称性
4 施主の要求やニーズの個別性・多様性
5 意思形成過程に多数の関係者が関与することの影響
6 コミュニケーション不足の問題
第4 建築請負における合意の事実認定
1 概 説
2 建築仕様の合意に関する表示行為
3 設計図書について
4 設計図書に明示されていない合意の要素について
5 建築仕様に関する専門的情報
6 施主側の固有情報
7 合意を形成する際の諸要素の調整
8 合意形成過程の時間的考察について
第3章 ソフトウェア開発契約
第1 本研究が対象とするソフトウェア開発契約
1 ソフトウェア開発の意義
2 開発工程と契約形態
3 仕様確定のための合意形成
4 仕様に関する合意の特徴
5 本研究の検討対象―ソフトウェア又はシステムの仕様に関する合意
第2 ソフトウェア開発の請負の仕様に関する合意形成過程の実態について
1 概 説
2 契約締結時までの仕様に関する合意形成
3 上流工程における仕様確定作業
4 仕様に関する合意を形成する諸要素の特徴
5 合意形成過程の時間的考察について
6 合意形成の背景にある当事者の関係等
7 多数者の関与する意思形成・合意形成
第3 合意形成過程において認識の齟齬が生ずる原因
1 序―インターフェイスの存在と認識の齟齬
2 情報伝達の困難性
3 専門的技術に関する知識の非対称性
4 ユーザーの要求やニーズの個別性・多様性
5 意思形成・合意形成に多数者が関与することの影響
6 コミュニケーション不足の問題
第4 ソフトウェア開発の請負契約における合意の事実認定
1 概 説
2 システム仕様の合意に関する表示行為
3 要件定義書及び基本設計書について
4 打合せ議事録及び電子メールについて
5 要件定義書・基本設計書に明示されていない合意の要素について
6 ソフトウェア開発に関する専門的情報
7 ユーザーの固有情報
8 合意を形成する諸要素の調整
9 合意形成過程の時間的考察について
10 補足―システム開発としての課題とITコンサルタントとしての課題の区別
第4章 開発型契約における合意の事実認定上の留意点
第1 序
第2 仕様に関する合意形成の時期
1 徐々に発展的に形成される合意
2 背景にある不確実性の中での合意形成
3 合意形成の時期の差異
第3 仕様に関する合意の表示行為を組成する要素
1 契約書以外の書面による表示行為
2 書面外の表示行為を組成する要素
3 情報伝達が不可能又は著しく困難な場合の表示行為
4 専門的知識に格差がある場合の表示行為
第4 仕様に関する合意内容の形成
1 概 説
2 有機的統一体としての合意形成
3 当事者の関係
4 意思形成に多数の関係者が関与すること
5 合意形成の時間的要因
第5章 プラント建設契約
第1 プラント建設について
1 プラントの意義
2 プラント建設契約の特徴
第2 プラント建設契約の概要
1 はじめに
2 契約の当事者
3 責務の範囲
4 対価,報酬の定め
5 性能保証の有無
6 間接損害の免責
第3 プラント建設契約の締結
1 開発の流れ
2 契約の態様
3 契約の締結
4 モデルフォームの内容
第4 リスクと紛争
1 プラント建設におけるリスク
2 プラント建設における紛争
第5 プラント建設契約に関する紛争の検討
1 はじめに
2 契約成立の有無
3 受注の範囲
4 機械的保証
5 性能保証
6 報酬に関する合意
第6 プラント建設契約に関するまとめ
1 一般的な建築工事契約との対比
2 事実認定の際の留意点


高等裁判所刑事裁判速報集(平成24年)
法務省大臣官房司法法制部編
書籍コード 26-01 A5判 288頁 定価 5,396円(本体 4,905)
 本書は,全国の高等検察庁において作成した「高等裁判所刑事裁判速報」に掲載された裁判例のうち平成24年分を,各高等裁判所ごとに,その速報番号にしたがって収録したものであり,昭和56年度版から継続的に刊行されているものである。この速報集は,その編集方針上,類書とは収録重点を異にした特色ある裁判例集として,検察内部のみならず,部外の法曹においても頻繁に利用されてきたものであって,裁判月日別索引も掲げられ,利用価値の高い資料となっています。


家裁調査官研究紀要 第17号
裁判所職員総合研修所監修
書籍コード 26-02 B5判 136頁 定価 3,353円(本体 3,048)
論 説
アタッチメント理論とその応用
・・・星 野 崇 啓
研 究
生物―心理―社会モデルを分析枠組みとした非行メカニズム解明の在り方の検討
―窃盗事案を対象として―
・・・小 野  誠 ほか
資 料
少年事件におけるアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の活用
―関係フレーム理論及びルール支配行動の概念を中心に―
・・・三 島 義 広
子が面会交流を拒否する現象の理解について
―循環として理解する枠組みの活用―
・・・谷 内 仁 美