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2018年7月発行 |
租税訴訟の審理について(第3版) | |||||||
ISBN 978-4-908108-93-8 | |||||||
書籍コード 30-04 | A5判 292頁 | 税込 2,954円(本体 2,685) | |||||
この資料は,司法研究報告書第36輯第2号として,刊行されたものの第3版です。
(はしがきより)
内閣に設置された司法制度改革審議会の意見書[21世紀の日本を支える司法制度]が平成13年6月12日に発表された。同意見書は,「21世紀の我が国社会においては司法の果たすべき役割が一層重要となることを踏まえると,司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で行政訴訟制度を見直すことは不可欠である。」との認識に基づき,「行政事件訴訟法上の個別課題として,原告適格,処分性,訴えの利益,出訴期間,管轄,執行不停止原則等のほか,義務付け訴訟,予防的不作為訴訟,行政立法取消訴訟等の新たな訴訟類型の導入の可否も問題となる。」との指摘を行った。同意見書を受け,内閣に設置された司法制度改革推進本部の行政訴訟検討会は,行政訴訟制度の見直しのための検討を行い,行政に対する司法審査の機能を強化して国民の権利利益の救済を実効的に保障する観点から,平成16年1月6日付けで「行政訴訟制度の見直しのための考え方」をとりまとめた。これを踏まえて立案されたのが「行政事件訴訟法の一部を改正する法律」(平成16年6月9日公布,平成17年4月1日施行)である。
「行政事件訴訟法の一部を改正する法律」は,義務付け訴訟・差止め訴訟を法定し,「公法上の法律関係に関する確認の訴え」を当事者訴訟の一類型として明示し,取消訴訟の原告適格について適切な判断を担保するための考慮事項を規定し,取消訴訟等の被告を処分等をした行政庁の所属する「国又は公共団体」に改め,取消訴訟等の管轄裁判所を@被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所,A処分等を行った行政庁の所在地を管轄する裁判所,B原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所に拡大し,取消訴訟の出訴期間を処分等があったことを知った日から6か月に延長し,取消訴訟等において裁判所は訴訟関係を明瞭にするため行政庁に対し処分等の理由を明らかにする資料の提供を求めること等ができることとし,取消訴訟等における執行停止の要件を緩和し,仮の義務付け・仮の差止めの制度を創設し,行政庁は処分等を行うときは相手方に対し取消訴訟の被告とすべき者や出訴期間等を書面で教示しなければならないとするなど,行政事件訴訟による国民の権利利益のより実効的な救済を図るための措置を講じた。
「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年12月2日公布)により改正された国税通則法(平成25年1月1日施行)は,「第七章の二 国税の調査」を新設し,個別税法の質問検査権及び税務調査手続に関する規定をこれに移すとともに,調査手続の透明性や納税者の予見可能性を高めるため,「税務調査の事前通知」,「調査終了後の手続」などの具体的な税務調査手続を法文化した。また,同法は,国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為について,行政手続法の適用除外の範囲から「理由の提示」を除き,白色申告に対するものも含め全ての処分につき,処分の理由を示さなければならないこととした。
「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成26年6月13日公布,平成28年4月1日施行)により改正された地方税法は,地方税に関する不服申立ては,地方税法に特別の定めがあるものを除くほか,新しい行政不服審査法の定めによる審査請求によることとし,異議申立ての手続を廃止して審査請求に一本化した。その結果,市長の更正・決定のように処分庁に上級庁がない場合には当該処分庁である市長に審査請求を行い,都道府県の税務事務所や地方事務所の長のした更正・決定のように上級庁がある場合には最上級行政庁の知事に審査請求を行うこととされた。審査請求期間は,処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月に延長された。
行政不服審査法82条は,行政庁は,不服申立てをすることができる処分をする場合には,処分の相手方に対し,当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないことなどを規定している。この規定は,国税に関する不服申立てについても適用される。
「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により,国税通則法の一部も改正された。
改正された国税通則法は,従前の異議申立てを「再調査の請求」に改称し,国税に関する処分に不服がある者は,処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に,その選択により,税務署長等に対して再調査の請求を行うか,直接,国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができる,再調査の請求を行った場合は,再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1か月以内に国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができることとした。なお,国税に関する処分に不服のある者は,国税不服審判所長の裁決があったことを知った日から6か月以内に裁判所に取消訴訟を提起することができる。
今回の第3版では,上記のような法改正を織り込み,新たな主要判例を補足した。
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